終りの始まり

それは僕があるモノを発見したことから始まりました
そのモノとは『ムラカミメグミ』…



僕はこの世の中で最も重篤な精神病の一つである
『雅Complex』について研究していました
この病気は簡単に言ってしまえば
Berryz工房に所属する『夏焼雅』さんのことが
好きになり過ぎて
最終的には死に至る
そして現在の科学では治癒が不可能とされている
所謂、不治の病、と言う奴で
僕はこの病気に対する特効薬で
一財産を築いて夏焼さんと結婚するんだ
この病気で苦しんでいる友人を救おうと思ってました



そんな研究を続けているうちに月日は流れ
残念なことに友人は雅Complexにより亡くなってしまい
僕は友人の敵を取らんと
ますますもって研究に打ち込みました




雅Complexに罹患すると
雅ちゃんのことばかり考えるようになり
いずれは本来、無意識にやっていること
例えば呼吸や臓器を働かせるといった
そんなことを司る部分ですら
雅ちゃんの事を考えることに使用され
遂には死に至るわけです
逆に言えば
雅ちゃんの事を考えることを食い止める事が出来れば
雅Complexによる死を免れる事が出来るのです



そんなこと出来る訳がない
一度、雅ちゃんの魅力に触れたが最期
あとはただ、雅ちゃんの事を考え続けるしかない
雅ちゃんの事を考えなくする
そんな不毛な研究をするよりは
脳の通常では活性化されていない部分を活性化させるなどして
脳そのもののキャパシティを増やす方がまだ可能性がある
それが学会での一般的な意見でした



そんな中、僕は学会の潮流に逆らうが如く
雅ちゃんのことを考えなくする方法を研究していました



そして遂に辿り着いたのが『ムラカミメグミ』だったのです



さて、ここでちょっと話題がそれますが
本来、医薬品は細胞などのin vitroの実験
そして動物などのin vivoの実験を経て
臨床実験、そして治験に入る訳です
さて、昨今の医薬品業界は再編の嵐です
その嵐の大きさは金融業界の比ではなく
世界的な医薬品メーカー同士の合併が日常茶飯事となっています
何故、そのような再編が行われているか?
それは医薬品の開発に異常なまでに投資が必要となり
規模を大きくしないと生きていけないからで
特に臨床試験や治験などは膨大なデータを集めねばならず
結局は規模がものを言う世界になっております



さて、こう書きますと、コレを読んでいる読者はあれ?と思うでしょう
そう、この『ムラカミメグミ』の実験をどのように行ったのか?
雅Complexは言うまでもなく
ヒト限定の疾患であり
雅Complex疾患モデルマウスなど存在しません
そして先ほども述べましたが
臨床データや治験を行うのは
非常に膨大なコストを必要とします



そこで僕は…この『ムラカミメグミ』を
最も身近な雅Complex患者に投与することにしました



最も身近な雅Complex患者…



それは他でもない…自分自身のことです



『ムラカミメグミ』を投与したその日
その日は全く『雅ちゃん』という言葉を口にしませんでした
これは僕が慢性雅Complexに罹患して初めての出来事でした
ただ、投与して日が経つにつれて
徐々に口から自然と『雅ちゃん雅ちゃん…』と漏れるようになりました
そこで僕は徐々に投与の頻度を上げることにしました
投与の頻度を上げ、雅ちゃんの事を考える時間を出来るだけ減少させ
雅Complexの進行を遅らせる
あわよくば完治を目指す
そう考えてました



『ムラカミメグミ』の効果は絶大でした
『ムラカミメグミ』を投与すると
その時は雅ちゃんのこと考えなくなったのです



実験データがあがるたびに
僕は狂喜乱舞しました
遂に夢にまで見た
一攫千金で雅ちゃんとの結婚
友人の敵が討てる日が来た
本気でそう思ったのです



そんなある日のことでした
その頃は2週間に一度の投与を行っていたのですが
投与してから10日くらい経つと
『ムラカミメグミ』を投与したくなってたまらなるようになりました
投与後、360時間経過すると
動悸、息切れ、悪寒を引き起こし
そして免疫力の低下なども引き起こすようになったのです



そうなんです…



雅Complexの特効薬になりうるであろう夢の素材
『ムラカミメグミ』には…













悪魔的な中毒性があったのでした














悪魔的な中毒性があることが分かった今でも
僕は『ムラカミメグミ』を未だに投与し続けてます
そしてそれを記録し続けようと思ってます
それは無論、中毒ゆえに投与し続けないと
精神と生命の維持の上で問題が生じるから
それもあります
ただ、それだけではないのです
僕は一研究者として
この夢の素材『ムラカミメグミ』の可能性がどうしても捨て切れないのです
雅Complxの治癒にはこの素材しかない
未だにそう信じています
だから…だから僕は『ムラカミメグミ』の可能性の追求のために
データを残せる限り残そう
そう思って投与し、その投与日記をつけ続けよう
後続の研究者の橋頭堡になろう
そう決心したのでした…